座敷牢の少女
(ここは、どこ)
あたしはそう呟いた。呟いたのだろうか。その呟きは空気を震わせたろうか。
真っ暗だ。真っ黒い。
わかること……あたしが『横たわっている』こと、それだけ。
ここはどこ。
ここは夢、それとも現実。
それでも。
それがわからなくてもあたしは眼を凝らす。闇の中に、何かを求めて。
杭打たれたように、四肢は完全に動かない。
眼が覚めたのだろうか。
それともこれから覚めるのだろうか。
覚めても覚めても、あたしは真っ黒いどこかに……横たわっている。
最後に何か食べたのは何日前だったろうか。
食欲があったのは、箸を落とさずに食事ができたのは、そして吐かずにすんだのは、何日前だったろうか。
思い出せない。
(助け、て)
ねえ、助けて。この檻から、誰かあたしを連れ出して。
ここはどこ、ここはどっち。どっちへいけばいいの。
何度目覚めても、あたしは一人でここにいて、何もできなくて。
誰か、あたしの手をひいて。どこかへ、ここじゃないどこかへ連れて行って。
あたしはまた目を凝らす、そして待っている。光を、誰かを。
希望を。
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